所沢市PTA連合会はPTA活動が充実するための3つの要素を次のように考えています。
- やりがいがある(達成感)
- 支え合い、励まし合う(人とのつながり)
- 活動を通して学び、豊かになる(親としての成長)
この3つの要素が満たされてこそ、はじめてPTA活動というボランティア活動が負担感から充実感に変わっていきます。
では、PTA改革をどのように行えばいいのでしょうか。所沢市PTA連合会では、PTA会長研修会を通して、5年間にわたり、地道に研修を続けています。それぞれの学校PTAの取組を互いに提供しながら、どうすれば「やってよかった」と言えるPTA活動にできるかを考え続けてきました。
お気に入りの興味あるテーマからご覧ください。
2 PTA改革は、一人ではできない(仲間づくり・学校や地域との連携)
4ーA「PTA会員のための見える化」PTA活動を会員に知ってもらうには
5 「活動の柔軟性」(できることを、できるひとで、できるときに)
1 なぜPTA活動は硬直化したのか
平成の30年間で、子育てをめぐる社会環境は大きく変化しました。
まず、専業主婦と共働きの比率は、平成元年の7:3から令和元年には事実上逆転しました。PTA活動に参加するには、「仕事を休まなければならない」あるいは「PTA活動に参加することが事実上不可能である」といった家庭の割合が増えました。
こうした社会環境の変化に対して、学校と家庭の連携の重要性は以前よりも重要になってきました。どの親も子どもの学校教育に関心を持ち、関わることは、大切だと考えていますが、かつての環境をベースにした活動が難しくなってきたのです。本来のPTA活動の趣旨が、親同士のつながり、支え合いですから、活動の在り方も時代の変化に応じて変わるべきでした。しかし、PTA役員は年度ごとに変わりますから、制度改革よりは現状維持に傾いてしまいます。
そこで生まれた現状維持の大原則は、「すべての保護者が同じ量の仕事を、平等に、毎年同じことを同じように」活動するというものです。平等で、負担の少ない効率的な活動にみえますが、これが、心理的な3つの束縛を生みだし、充実感よりもやらされ感・負担感・強制感を強めました。
(義務感)やらないといけない、ルール主義。
(強制感)こうやるべきである、前例踏襲主義。
(不公平感)やらない人がいるのはおかしい、平等主義。
自分の子どもだけでなく、学級や学校のすべての子どもたちのために活動することは、困難を抱えている家庭を支援することになるはずです。PTAに入会しない家庭の子どもには、恩恵を与えないというのはPTA活動の趣旨を逸脱した誤った考え方です。親同士が、繋がり、励まし合い、支え合う姿を見ることは、子どもたちが人生最初の社会の仕組みを学ぶ機会です。所沢市PTA連合会では、令和元年度のパネルディスカッションで、PTA活動の意義を次のように提案しました。この3つの鍵こそが、PTA活動の本来の目的だと考えます。
(達成感)やりがいがある。
(人とのつながり)支え合い、励まし合う。
(親としての成長)活動を通して学び、豊かになる。
では、この3つの意義を実現すために、どのようにPTA活動を改革していけばいいのか、所沢市PTA連合会の学校PTAの取組をご覧ください。
2 PTA改革は一人ではできない
PTA活動の在り方を変えるには、PTA会長ひとりの力では不可能です。
PTA改革は、見える化に始まり、方針の決定、企画・運営・評価など時間と労力がかかります。 所沢市内でPTA改革に取り組んでいるPTAの共通点は、「PTA活動を変えていかなくてはいけない」という気持ちを持った人たちのつながりでした。同じ年度の役員どうしの横のつながり、前年度から次年度へと年度を越えた縦のつながり。教職員との連携・協力も非常に大きな推進力となります。また、後援会や地域の関係団体とのつながりが、改革を後押ししていくれます。こうしたつながりが、PTA改革を実現させ、会員が充実感をもって参加できる組織へと変えていきます。
所沢小学校のPTA改革は、PTA会長と校長先生がひとつになって、後援会を巻き込んだ取組です。PTA会長研修会での報告をご覧ください。
3 PTA改革のための3つの視点
所沢市PTA連合会は、PTA会長研修会を実施して、互いの情報を共有したり、課題について話し合ったりしています。PTAの3つの心の足かせやPTAの3つの意義についても、そうした集まりの中で生まれてきました。
そうした取組に共通する3つの視点をまとめてみました。
- 見える化(活動が見える、伝わる、つながる)
→改革の最初の一歩(どうやって会員がつながるか)(ICT化を含む)
- 活動の柔軟性(できるときに、できることを、できる範囲で)
→意識改革から制度改革へ
- 組織の多様性(多様な活動が、様々な人を呼び寄せる)
→活動の意義や目的の見直し(活動の削減が目的化しないように)
PTAの改革に取り組む際に、ぜひ参考になればと思います。
4-A「PTA会員のための見える化」PTA活動を会員に知ってもらうには
【受信型の情報発信】(会員に情報が発信されます。)
市内では、CODMONや学プリなどのアプリを導入したり、学校配信メールを活用したりするなど、これまでの紙媒体と井戸端会議から脱却して、迅速かつ確実にPTAの情報を伝えようとしています。最近、注目されるのは、CODMONや学プリ、マチコミなどの有料アプリを導入するPTAです。こうしたアプリに予算を組んでいるPTAは、現在7つですが、今後増えていくものと考えられます。
所沢市PTA会長等研修会での清進小学校のオンライン・ペーパーレス化に関する取組の発表をご覧ください。
【アクセス型の情報発信】(会員が自分からアクセスします。)
ホームページやブログをPTAが作成し、会員が自分でアクセスします。PTA活動の様子を、リアルタイムで伝えることができます。清進小学校、所沢小学校のホームページを紹介します。また、学校のホームページにPTAのページを開設して、PTA情報をこまめに発信するPTAも増えています。PTA総会は令和4年度で市内の3分の2が書面総会で実施され、多くの総会資料がホームページ等から伝えられました。
山口中学校では、コロナの時代の中で、家庭教育学級をオンラインで実施しました。
【紙ベースでしかできない情報発信】
PTA広報紙も、楽しい情報発信のツールです。紙で作った広報紙は、PDF版としてWeb配信も可能です。ただし、紙での配布ならば、写真などの個人情報の流出にWebほど気を使わなくてよいという利点があります。年度当初に配布される先生紹介など、楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。
4―B「役員のための見える化」役員が不安なくPTA活動ができるには
(1) 他校PTAとの比較~見える化プロジェクト(令和4年度)
所沢市PTA連合に加盟している45校の学校PTAから提出された総会資料とアンケート調査をもとにPTA活動の実態を調べています。
見える化プロジェクトの調査結果
本部役員
・小・中学校ともに、本部役員の人数は、会長は1名、副会長は平均3.2人、書記は2.5人で、コロナ禍前よりも人数が減っています。
・所沢市のPTA会長の中で、女性の割合は令和元年の6人から11人に増えました。女性会長は、会員の多くを占める母親とのコミュニケーションがとりやすいというメリットがあります。
会議の数
・運営委員会は、年間平均4.9回で、コロナ禍前よりも減りました。また、本部役員会は平均5.8回ですが、21のPTAが随時開催でコロナ禍での会議の難しさを表しています。
・会議は、省力化・効率化が進むとともに、ICT化によってラインや有料SNS、ホームページ、ブログなどでの情報交換も進みました。リアルな話し合いが制限され、Zoomの活用もありました。
設置されている委員会
・PTAの仕事は、委員会が担っており、この委員会のメンバーも「役員」になります。学年学級委員会、広報委員会、教養委員会などですが、委員会の設置や決定の方法については、多くのPTAで見直しが進んでいます。
・学年・学級委員がないPTAが、市内には5校あります。また、1学級1名という学級委員の人数の縛りがないPTAが7つあります。実際の活動が、委員会に割り振られていなかったり、ボランティアを募集したりと、実態が異なるので数だけでは活動の様子は把握できませんでした。東所沢小では、1年生の保護者は「学校に慣れる」時期として、役員を免除していますので、3学期に顔なじみになった旧クラスで役員を決めています。詳しくは、会長研修会での東所沢小の報告をご覧ください。
〇東所沢小のPTA会長研修会での報告「情報共有・制度改革・デジタル化の取組」
(2) スケジュールシートの作成
〇年間活動マニュアルシートは、年間の活動を1枚のシートにまとめます。
- 新たな役員候補者の不安を和らげる。
- PTA内部で、協力し合える体制を作る。
- リマインダーまたはチェックリストとする。
- 役員の負担を減らす余地はないか、効率化・スリム化資料とする。
〇主要な活動のマニュアルシートは、大きな行事の道しるべです
- 毎年ある大きな行事のために、次年度の役員が困らない。
- 追加・修正ができるようデータで受け継いでいく。
5 活動の柔軟性
- 学校まかせにはしないという決意には、相応の保護者の負担は求められます。しかし、大切なのは、できるひとが、できることを、できるときに、互いに負担しあうということです。3人しか集まらなければ、3人でできる活動を行えばいいし、逆に人数が増えた場合はそれなりの活動を行えばいいという組織の柔軟性が大切です。
また、前年と同じようにやらなければいけないという固定観念からは解放されましょう。活動の目的を確認しながら、毎年、集まった役員さんで工夫をしていくのが本来の姿です。
効率化と充実のバランスを常に意識しながら、活動の見直しを時間をかけて続けていく必要があります。最低でも3年はかかるようです。
[事例]PTA会則の中で、役員や係の人数を「〇〇名」から「数名」「若干名」などに規約変更したPTAがあります。また、ある役割を学級で選んでいたものを、学年全体から募るというように変えたPTAもあります。
6 組織の多様性
気をつけるべきは、負担軽減という掛け声のもとで、活動を安易にカットしてしまうことです。PTAというコミュニティが存続するには、多様な親の考えを生かす多様な活動が必要です。やりたくない人が強制されないのと同様に、やりたい人ができない組織であってはなりません。効率化とアウトソーシングだけに走れば、コミュニティが持っているゆとりを失い、井戸端会議で生まれる声や困っている親の声が、聞こえなくなってしまいます。もちろん、ルールに縛られない「活動の柔軟性」があっての多様性です。必要な時にボランティアを募るという方法もありますが、組織の多様性についてぜひ一考をお願いします。
ベルマーク活動は、時代遅れと切り捨てられましたが、今でも事務職員が細々ながら、プリンターのトナーでポイントを集めている学校があります。協力できる人で、人数が少なければできる程度の活動をするという「活動の柔軟性」+「組織の多様性」という考え方はいかがでしょうか。
問い合わせ先
内容に関する問い合わせは、所沢市PTA連合会連事務局までお願い申し上げます。